認知症になると、意思能力がなくなります。意思能力がない人の契約行為などは「無効」「取り消せる」状態になります。つまり、遺言や日々の財産管理などができなくなってしまいます。認知症対策に詳しい大阪の本町の行政書士が解説します。認知症になる前に、先手先手の対応が必要です。
認知症とは
認知症の定義
脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態を認知症と言います。法的には、意思能力がない状態と言います。
日本における65歳以上の認知症の人の数は約600万人と推計され、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されており、高齢社会の日本では認知症に向けた取組が今後ますます重要になります。
また、認知症は誰でもなりうることから、認知症への理解を深めることが重要となります。
意思能力がなくなることで、法律行為(契約・預貯金の管理・手続きなど)が自分一人でできなくなります。
意思能力とは、有効に意思表示をする能力のことを言います。具体的には、自分が行ったことの結果を理解することができる能力のことです。
認知症の判断基準
長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用い、30点満点中20点以下だと認知症の疑いがあるとされます。
認知症の症状として、以下のようなものがあります。
もの忘れ
- 数分前や数時間前のことをすぐ忘れる
- 同じことを何度も言う・聞く
- いつも探し物をしている
- 約束を忘れる
- 昔から知っているものや人の名前が出てこない
- 同じものを何度も買ってくる
時間・場所
- 日にちや曜日がわからなくなる
- 行き慣れた道で迷うことがある
- できごとの順序がわからなくなる
理解力・判断力の低下
- 手続きや預金の入出金ができなくなる
- テレビ番組の内容が理解できなくなる
- 運転などのミスが多くなる
身の回りのこと
- 仕事や家事・趣味の段取りが悪くなり、時間がかかるようになる
- 調理の味付けを間違える
- 掃除や洗濯が雑になる
- 季節に合った服装を選ぶことができなくなる
- 食べこぼしが増える
認知症になったら家族が困ること4選!
遺言について:自由に遺産を分配できなくなってしまう
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。どの遺言を作成するにも、意思能力が必要です。つまり、認知症になってからでは遺言書を書くことができなくなってしまいます。そのため、本人が自由に遺産を分配できなくなってしまいます。
財産管理について:家族に銀行から引き出してもらえなくなる
家族に預貯金の管理をお願いする場合、基本的にはその都度、委任状が必要です。委任状は本人に意思能力がないと効力がありません。そのため、家族は預貯金の管理ができず、またご自身で引き出すことも難しくなってしまいます。
財産管理委任契約をすると、委任状は不要になりますが、公証役場で公正証書にて財産管理委任契約書を作成する必要があります。ご自身が公証役場に出向かなければならないうえに、本人が口頭で契約の内容を伝える必要があります。実際には行政書士が契約の文面を本人や公証役場と打ち合わせを事前にしているので、読み上げるだけではありますが。意思能力がないので、認知症になってからの契約はできません。
相続について:第三者である成年後見人や特別代理人を交えて遺産分割をしなければならなくなる
認知症の状態で相続が発生してしまうと、遺産分割協議に本人が参加できません。遺産分割協議は被相続人が全員参加する必要があります。成年後見人がいれば、成年後見人が本人の代理で遺産分割協議に参加します。成年後見人も相続人の場合は、家庭裁判所から特別代理人が選任され、特別代理人が本人の代理で遺産分割協議に参加します。成年後見人も特別代理人も法定相続分を確保する使命があるので、兄弟のうち誰かに全額などの協議は難しくなります。
また成年後見人がいない場合は、選任の申し立ての手続きがまず必要で、あとあとの他の手続きに影響が出ます。
後見について:自由に後見人が選べなくなってしまう
後見には法定後見と任意後見の2種類があります。法定後見では、後見人の候補は選べますが、必ずしも候補者が選任されるとは限らず、見ず知らずの弁護士や司法書士が選任される場合があります。つまり、全く会ったこともない第三者にお金の管理を委ねることになってしまう場合があります。ちなみに、後見人の候補者としては、親族・弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士がなれます。
任意後見では、後見人を自らの意思で予め選んでおくことができます。公証役場で公正証書にて任意後見契約書を作成する必要があります。ご自身が公証役場に出向かなければならないうえに、本人が口頭で契約の内容を伝える必要があります。実際には行政書士が契約の文面を本人や公証役場と打ち合わせを事前にしているので、読み上げるだけではありますが。意思能力がないので、認知症になってからの契約はできません。
認知症になる前にしておくべきこと
遺言書を書くこと
法定相続分(法律で決まっている相続割合)ではない相続をしてもらいたい場合は、遺言書を作成する必要があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言と秘密証書遺言の3種類があり、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つが主流です。
自筆証書遺言は法律で書く内容・形式が定められており、ご自身で作成すると無効となるような形式の遺言書ができてしまう恐れがあります。なので、行政書士・司法書士・弁護士の法律職の専門家に依頼することをオススメします。後述の公正証書遺言より安価に作成できる反面、自分で書く必要があるので、文字をご自身で書けるうちに作成しなければなりません。財産目録のみパソコン入力等が認められています。
公正証書遺言は公証人が作成するので、ご自身で文字が書けなくても作成できます。ご自身が公証役場に出向かなければならないうえに、本人が口頭で契約の内容を伝える必要があります。実際には行政書士が契約の文面を本人や公証役場と打ち合わせを事前にしているので、自筆証書遺言と比較して手前に差はありません。公正証書遺言を作成すると、全国の公証役場から遺言の検索ができ、遺族が遺言書を見つけられないという事態は避けられます。その分、自筆証書遺言より作成の費用は高くなります。
財産管理委任契約を結んでおくこと
預貯金の管理が難しくなってきた段階で、財産管理委任契書を作成しておきましょう。任意の契約なので、誰に任せるかご自身で決められます。
公正証書遺言は公証人が作成します。行政書士が契約の文面を本人や公証役場と打ち合わせを事前にしているので、契約の内容を読むだけで済みます。
財産管理委任契約を結んでいることで、その都度の委任状も不要になります。もし、財産管理委任契約をせずに、キャッシュカードと暗証番号でご家族が預貯金の引き出しをすると、正当な権限がない状態での行為になり、好ましくありません。ご家族が管理する場合でも契約を結んでおきましょう。
後見人を決めておくこと
任意後見の場合は、後見人をご自身で決められます。任意後見は財産管理委任契約と同様に公証役場で公正証書で作成します。
まだ認知症になっていない状態だと思いますので、後見の予約のようなイメージです。実際に認知症が発症してから、契約を基に、後見人が選定されます。
任意後見契約の場合、見守り契約+財産管理委任契約のセットになります。認知症が発症するまでは見守り契約と財産管理委任契約でカバーし、認知症が発症したら、それらを中止し、後見が正式に始まります。
もし、財産管理委任契約をセットにせず、認知症が発症した場合は、後見開始までの間、正当な権限で財産管理を行う方法がありません。
認知症が既に発症してしまっていたら・・・
すぐに家庭裁判所へ法定後見の申立て手続きをしましょう。
認知症(意思能力がない)の状態では、委任することができないので、基本的には家族も何も本人の代わりに手続きができなくなってしまいます。さらに、そのタイミングで相続が発生してしまうと、円滑な手続きが困難になってしまいます。
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クロスターミナル行政書士事務所:下井
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