相続が発生したときの事務手続きの流れやポイントについて、相続業務の取り扱いのある大阪の行政書士が解説します。
相続(遺産分割協議書作成)の手続きとは
市役所や法務局、銀行など多種多様な手続きが必要です。
相続には、単純承認・限定承認・相続放棄の3種類があります。
今回は、単純承認を前提として解説していきます。
相続(遺産分割協議書作成)の流れについて
行政書士である下井が普段、相続の業務で実際にしている手順です。
遺言書ではなく、遺産分割協議をして分割するときの流れです。
- 1.相続人の調査(被相続人)
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を市役所・区役所で取得します。
※詳しくは、後述します。
- 2.相続人の調査(相続人)
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍で登場した人物の現在の戸籍と住民票を市役所で取得します。
※詳しくは、後述します。
- 3.法定相続情報一覧図の作成
- 集めた戸籍と住民票を基に、法務局で法定相続情報一覧図を作成します。
法定相続情報証明を取得します。
※詳しくは、後述します。
- 4.遺言書の調査
- 自宅や金庫、法務局、公証役場で遺言が保管されていないか調査します。
※詳しくは、後述します。
- 5.財産の調査
- 建物・土地・預貯金・借金などの有無や金額を調査します。
※詳しくは、後述します。
- 6.財産目録の作成
- 財産目録を作成します。
※詳しくは、後述します。
- 7.遺産分割協議書の作成
- 遺産分割協議を経て、遺産分割協議書を作成します。
印鑑証明書と実印が必要です。
※詳しくは、後述します。
- 8.遺産執行
- 遺産分割協議書を基に、遺産を振り分けます。
※詳しくは、後述します。
- 9.相続終了
- お疲れ様でした。
単純承認について
一般的な相続の方法です。
資産もゲットできますが、負債も同時にゲットします。
限定承認について
負債の範囲内で、資産をゲットします。
相続放棄まではしたくなく、相続は一応するが、負担を最小限に抑えたいときに活用します。
ただし、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。
相続放棄について
相続をしたくないときに活用します。
例えば、父母が離婚しており、別れた父の相続をするときなど、負債が大きい場合や負債額が特定できない場合などに活用します。
ただし、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きが必要です。
遺産分割協議書の作成の方法とその流れについて
前述の流れについて、詳しく説明していきます。
相続人の調査(被相続人)について
亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍を本籍地のある市役所・区役所で取得します。
「出生から死亡まで」と伝えていただければ、その市役所で発行できるものがすべて取得できます。
もし、本籍地が分からない場合は、本籍地入りの住民票の写しを取得してください。その住民票を基に、戸籍を取得してください。
もし、出生の記録のある戸籍がなければ、本籍地を異動していることになります。その中の1番古い戸籍に「●●より転入」とあるので、●●の市役所で「出生から発行できる分まで」の戸籍を取得してください。
「●●より転入」の記載がなくなり、出生した記録に辿り着ければ、このミッションはクリアです。
戸籍の取得に合わせて、住民票の除票も取得します。
取得するもの
- 被相続人の戸籍(出生から死亡まで)
- 被相続人の住民票の除票
戸籍の種類について
日本では明治4年の旧戸籍法制定から4種類の戸籍がつくられ、昭和22年の現行戸籍法により現在の形の戸籍となりました。
明治5年式戸籍→明治19年式戸籍→明治31年式戸籍→大正4年式戸籍→現行戸籍
戸籍と除籍、謄本と抄本の違いを抑えるだけで良いです。
現在戸籍
一般的な、現在の戸籍のことです。
除籍
戸籍の中の人の全員が婚姻・死亡などによって戸籍を出ることです。
原戸籍
戸籍法の改正によって、戸籍を新しく作り変える際にもととなった戸籍のことです。
改製原戸籍
改製のもととなった原戸籍のことです。
戸籍謄本
全員の情報が記載されている戸籍のことです。
戸籍抄本
全員ではなく、特定の人の情報が記載されている戸籍のことです。
戸籍の附票
住所の移転履歴を記録したものです。
本籍は分かっているが、住所が分からない場合に取得します。
相続人の調査(相続人)について
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍から法定相続人を読み解いて、法定相続人全員の現在までの戸籍を取得していきます。
前述の亡くなった方の戸籍は、現在(死亡)→過去(出生)を追跡しましたが、こちらの法定相続人の戸籍は、過去(被相続人の戸籍)→現在を追跡しています。
つまり、「●年●月●日に●●に転出」とあるので、●●の市役所で「●年●月●日から現在の発行できる分まで」の戸籍を取得してください。
「●●に転出」の記載がなくなれば、このミッションはクリアです。
戸籍の収集が終われば、法定相続人全員の住民票の写しを取得します。
戸籍には住所の記載がないので、住所がわからない法定相続人については、戸籍の附票を取得して住所を確認します。
取得するもの
- 法定相続人全員の戸籍
- 法定相続人全員の住民票の写し
法定相続人とは
法律で決められている相続人です。特定の誰かにだけ分配する場合についても、法定相続人全員の合意が必要なため、漏れがないように相続人を洗い出していきます。
第1順位
配偶者&子ども
子どもが亡くなっている場合は、配偶者&孫
第2順位(子どもも孫もいない場合)
配偶者&父母
父母が亡くなっている場合は、配偶者&祖父母
第3順位(子どもも孫も父母、祖父母もいない場合)
配偶者&兄弟姉妹
兄弟姉妹が亡くなっている場合は、配偶者&甥名
法定相続情報一覧図の作成について
前述の戸籍と住民票を基に、法定相続情報一覧図を作成して、管轄の法務局に提出します。
法定相続情報一覧図とは、法定相続人のみが記載された家系図のことです。
法定相続情報証明を取得して、戸籍の束の代用品として、以後の手続きで使用します。
戸籍の束の代わりとなるので、各窓口の担当者が戸籍の束を確認する必要がなくなるので、待ち時間の短縮などの効果があります。
提出書類
- 申出書
- 法定相続情報一覧図
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍(出生から死亡まで)
- 被相続人(亡くなった方)の住民票の除票 or 戸籍の附票
- 法定相続人の戸籍
- 法定相続人の住民票の写し
- 相続人代表者の本人確認書類
遺言書の調査について
自宅や貸金庫に遺言書が残っていないか探します。
もし、遺言書が見つかっても、すぐに開けないでください。家庭裁判所で検認という手続きが必要です。
もし、遺言書作成を行政書士や司法書士等の専門家に依頼している場合は、事務所の封筒や年賀状などが残っている可能性があります。もし、それらが残っていたら、当該専門家に問い合わせしてください。
法務局や公証役場で遺言書が保管されているケースがあるので、併せて確認します。
もし、行政書士などの専門家が遺言書に関与していれば、ほとんど公正証書遺言を作成しているので、公証役場での照会で見つかることが多いです。ただし、その日以降に個人で新しく遺言書を作成している可能性もあるので、ひととおり探すことは必須です。
法務局
自筆証書遺言を法務局に預けている可能性があります。
2020年7月1日からの制度なので、その日以降に亡くなった場合に確認します。
まず、自筆証書遺言が法務局に預けられているか確認します。
提出書類
- 交付請求書
- 被相続人(亡くなった方)の戸籍(死亡)
- 請求者の住民票の写し
- 被相続人(亡くなった方)と請求者の関係がわかる戸籍
- 請求者の本人確認書類
- 手数料800円
次に、預けている場合に遺言書の内容を確認します。
提出書類
- 交付請求書
- 法定相続情報証明
- 請求者の本人確認書類
- 手数料1,400円
公証役場
公正証書遺言が公証役場に残されていないか確認し、遺言検索照会結果通知書を取得します。
全国どこの公証役場からでも照会が可能です。
費用は無料です。
平成元年より前の遺言書については、各公証役場でしか照会できません。平成元年以降の分は最寄りの公証役場で全国の公証役場に対して照会できます。
提出書類
- 法定相続情報証明
- 請求者の本人確認書類
財産の調査について
財産を特定して、金額を調べていきます。
土地について
法務局で登記事項証明書を取得し、権利の状況を確認します。
提出書類
- 交付申請書
- 手数料600円
また、市役所で固定資産税評価証明書を取得し、金額を確認します。
提出書類
- 固定資産税証明書交付請求書
- 法定相続情報証明
- 相続人の本人確認書類
- 手数料
価格については、様々な算出方法があります。こちらでは固定資産税をベースにした価格(課税標準額)を用いています。
建物について
法務局で登記事項証明書を取得し、権利の状況を確認します。
提出書類
- 交付申請書
- 手数料600円
また、市役所で固定資産税評価証明書を取得し、金額を確認します。
提出書類
- 固定資産税証明書交付請求書
- 法定相続情報証明
- 相続人の本人確認書類
- 手数料
価格については、様々な算出方法があります。こちらでは固定資産税をベースにした価格(課税標準額)を用いています。
財産について
銀行で残高証明書を取得します。
その際に同じ銀行で複数口座を持っていないか確認します。
提出書類(あくまで例です。金融機関により異なります。)
- 被相続人(亡くなった方)の通帳
- 法定相続情報証明
- 相続人の本人確認書類
- 相続人の印鑑
- 手数料
負債について
銀行口座の通帳記録などで調査します。
信用情報センターに確認する方法もあります。
財産目録の作成
財産を調査した結果を基に、目録という一覧表を作成していきます。
あくまで一例で、表記の方法も様々あります。
不動産
- 所在・地番
- 地目・種類
- 地積・床面積
- 名義・持分
- 評価額
- 備考(現状・利用状況等)
預貯金・現金
- 種別
- 銀行・支店名
- 口座番号
- 金額
- 名義人
- 備考(保管者等)
株式・投資信託
- 種別
- 証券会社・銘柄等
- 株式番号等
- 数量
- 評価額
- 名義人
- 備考(保管者等)
その他の財産(自動車・宝石・貴金属・骨董品など)
- 品名
- 数量
- 鑑定金額
- 備考(保管者等)
負債
- 種別
- 相手方
- 残額
- 毎月返済額・完済予定年月日
遺産分割協議書の作成
法定相続人全員で遺産分割協議をし、話し合いの結果を文書にまとめて、全員の記名押印により、遺産分割協議書を作成します。
必要な記載事項
- 被相続人(亡くなった方)の名前と死亡日
- 相続人が遺産分割内容に合意している旨
- 相続財産の具体的な内容
- 相続人全員の名前・住所
- 相続人全員の実印での押印
複数ページに渡る場合は、相続人全員の割印が必要です。
遺産執行
これまで集めてきた書類や作成した書類を基に、遺産を遺産分割協議書どおりに分配していきます。
預貯金の手続きについては、待ち時間が長かったり、複数回に分けて訪れないといけない金融機関があります。
遺産執行は、基本的に平日でしか対応ができません。郵送やオンラインでの手続きはまだ少なく、窓口での手続きがほとんどのため、行政書士などの専門家に依頼することをオススメします。
相続終了
相続人の調査から始まり、遺産執行まで標準で半年から8ヶ月ほど要します。
私がサポートする場合は、おおむね1~3ヶ月程度で調査から執行までを行っております。
相続人の数、財産の種類、相続人に認知度が発生している、相続人と仲が悪いなど、様々な要因があるので、案件により処理日数が異なります。
遺産分割協議書の作成はクロスターミナル行政書士事務所まで
相続の手続きは非常にややこしいです。
出だしの戸籍の収集からハードルが高いものになります。特に、昔の戸籍は手書きなので、文字が読みにくかったり、親子兄弟姉妹以外に親戚なども一緒に記載されており、読み解いていくことが困難です。
また、財産の調査も金融機関ごとで手順や必要書類が異なり、煩雑です。金融機関によっては、複数回窓口に出向く必要があることもあり、平日に稼働しなければならない日が増えます。
手続きの煩わしさや時間の短縮などの効果が見込めますので、是非ともクロスターミナル行政書士事務所までご相談ください。
費用は、10万円からとなります。
なお、ケースバイケースになるので、一律の料金設定ができません。
上記は、あくまで一例です。
記載していないことも多くあります。
例えば、認知症を発症している相続人がいれば、成年後見人が必要となり、成年後見人なしでは遺産分割協議ができません。
また、相続財産に自動車があれば、車庫証明や移転登録などの手続きが必要です。
もし、株を持っていて、未上場株式で譲渡禁止特約が付いている場合などは負の遺産となる場合もあります。
さらに、相続財産が3,000万円+法定相続人×600万円を超えると、相続税の手続きが必要です。
遺産分割協議書の作成は下井までご相談ください。
上記のように、様々な論点があります。
財産にまつわる大切な手続きなので、行政書士等の専門家にお任せください。
もし、相続人同士で揉めている場合は、弁護士しか対応できないのでご注意ください。
円満に解決できそうな相続に関しては、行政書士でも対応できます。
公式LINEやお問い合わせフォームよりご連絡ください。
平日の夜間や土日祝でも対応が可能です。
大阪市の本町で相続・遺言を中心に活動する行政書士事務所
クロスターミナル行政書士事務所:下井
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