2期前の売上高が1,000万円未満の場合は税務署に所得税を納めなくても良かったのですが、インボイス制度の開始により、従来のやり方では不利益となる場合があります。
本来税理士の範囲ですが、会計記帳等を行っていることから行政書士である私も解説いたします。
インボイスとは
売手が買主に対し、正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段であり、一定の事項が記載された請求書や納品書、領収書、レシート等のことです。
記載項目
- 適格請求書発行事業者の氏名or名称、登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きor税込み)、適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名or名称
不特定多数の者に対して販売等を行う小売業・飲食店業・タクシー業等に係る取引については「書類の交付を受ける事業者の氏名or名称」を省くことができます。
事務所の賃貸借のように契約書に基づき代金決済が行われ、請求書や領収書がその都度ない場合は、契約書と通帳を合わせて記載事項を満たせば適格請求書とすることが可能である。すなわち、契約書に上記の記載事項(取引年月日と取引内容以外)を追記する必要がある。
インボイス発行事業者登録制度とは
インボイスを交付できるのは、インボイス発行事業者に限定されます。
インボイス制度発行事業者となるためには、課税事業者となり登録の手続きが必要です。
売上高が1,000万円以下となった場合でも課税事業者となった日から2年間は免税事業者には戻れません。
インボイス発行事業者の登録方法
- 事業者
- 登録申請の手続きをする。
- 税務署
- 審査をし、登録簿への掲載、公表を行う。
- 事業者
- 税務署から登録番号が通知される。
インボイス発行事業者の登録スケジュール
令和5年10月1日より、インボイス制度が開始されます。
令和3年10月1日から令和5年3月31日までにすると、制度開始に間に合います。
インボイス発行事業者の登録で公開される情報
以下の事項がインターネットで公開されます。
- インボイス発行事業者の氏名 or 名称
- 登録番号
- 登録年月日
- (法人の場合)本店 or 主たる事務所の所在地
公表の申出をすると、
- (個人事業者)主たる屋号
- (個人事業者)主たる事務所の所在地
- (人格のない社団等)本店 or 主たる事務所の所在地
インボイス発行事業者の義務
以下の義務があります。
- 適格請求書の交付
- 適格返還請求書の交付
- 修正した適格請求書の交付
- 写しの保存
請求書や領収書等に誤りがあった場合、訂正ではなく作り直しが必要です。
仕入税額控除とは
受領した消費税額から支払った消費税額を控除して税務署に納める制度です。
仕入れに限定されず、経費部分で払った消費税も対象になります。
実際の消費税の計算式はもっと複雑ですので、上記とは異なります。
帳簿の記載事項
仕入税額控除を受けるには、下記を記載した帳簿が必要です。
- 課税仕入れの相手方の氏名 or 名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 対価の額
簡易課税とは
仕入税額控除を行う場合の消費税の計算式は複雑です。そのため、例外として簡易課税制度を活用することで事務負担を軽減することができます。
簡易課税の計算式
消費税額=売上税額ー売上税額×みなし仕入率
みなし仕入率とは
事業区分 | 該当事業 | みなし仕入率 |
第一種事業 | 卸売業 | 90% |
第二種事業 | 小売業・農林漁業 | 80% |
第三種事業 | 鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業 | 70% |
第四種事業 | いずれにも該当していない業種 | 60% |
第五種事業 | 運輸通信業・金融業・保険業・サービス業 | 50% |
第六種事業 | 不動産業 | 40% |
簡易課税のメリット
- 消費税額の計算が容易になる
- 請求書や領収書を受領する際に適格請求書かどうかを問わない
- 事務負担が軽減される
簡易課税のデメリット
- 赤字の事業者の場合、従来の計算方式のほうが消費税額を抑えられる場合がある
- 2年間は簡易課税を継続しなければならない
免税事業者が取るべき選択について
売上先が消費者の場合(BtoC)
免税事業者のままでも影響は少ないです。
→消費者は仕入税額控除を行わないため
売上先が免税事業者である場合(BtoB)
免税事業者のままでも影響は少ないです。
→免税事業者は仕入税額控除を行わないため
売上先が簡易課税の事業者である場合(BtoB)
免税事業者のままでも影響は少ないです。
→みなし仕入率で計算を行うため
売上先が仕入税額控除を行う課税事業者である場合(BtoB)
以下の方法をご検討ください。
- 課税事業者・インボイス発行事業者となり、簡易課税を選択する
- 課税事業者・インボイス発行事業者となり、仕入税額控除を行う
- 課税事業者・インボイス発行事業者となり、10%の値上げを交渉する(影響はない)
- 課税事業者・インボイス発行事業者となり、現行の価格を維持する(影響は大きい)
- 免税事業者のままで、現行の価格を維持する(影響はない)
- 免税事業者のままで、10%の値下げを受け入れる(影響は大きい)
売上先が免税事業者、簡易課税事業者かを知っていなければ対策を考えるのは難しいです。
免税事業者発行の請求書でも仕入税額控除を制度実施後3年間は8割、その後の3年間は5割と計算ができる経過措置はありますが、事務負担が大きいです。相手方の事務負担を考慮すると、課税事業者となったほうが良いかと思います。
買い手(発注者)が注意するポイントについて
下請法違反
免税事業者であることを理由にして、消費税相当額を支払わない行為は違反となるおそれがあります。
課税事業者になったにも関わらず、免税事業者であることを前提に行われていた単価の交渉に応じず、一方的に従来通りに単価を据え置いて発注する行為は違反となるおそれがあります。
独占禁止法違反
課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、それにも応じなければ取引を打ち切るなど一方的に通告することは、違反となるおそれがあります。
課税事業者となるに際し、価格交渉の場において明示的な協議なしに価格を据え置くことは、違反となるおそれがあります。
インボイス発行事業者となった場合の事務負担増加の対応について
各種補助金でインボイス対応事業者には手厚い補助があります。
小規模事業者持続化補助金
インボイス枠
投資対象:販路開拓
補助率:2/3
補助上限:100万円
要点:150万円を投資すれば、100万円がキャッシュバックされる。
150万円の投資が実質的に50万円で済む。
IT導入補助金
デジタル化基盤導入類型
投資対象:ITツール
補助率:3/4
補助上限:50万円
要点:66万円を投資すれば、49万円がキャッシュバックされる。
66万円の投資が17万円で済む。
また、パソコンの購入も可能である(補助率:50% 補助上限:10万円)
会計記帳・補助金は行政書士に依頼すれば安心
法律や制度は、違反を防止するため複雑になっています。日頃からルールに沿った会計処理が必要です。
また、補助金もどう申請書を書いたらいいかわからない、公募要領の文字量が膨大で理解できないという声も多数いただきます。
会計記帳や補助金の申請や相談は、クロスターミナル行政書士事務所へお問合せください。
大阪市の本町で企業支援・フリーランス支援・補助金等で活動する行政書士事務所
クロスターミナル行政書士事務所:下井
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